<報告>第4回口頭弁論 裁判長が引き続き積極的な争点整理 健康影響の説明求める

さる7月18日(水)、16:00~16:45まで第4回の期日がありました。以下では、まず1で当日の様子、2で今後の展望について明日香の個人的な見方を簡単に述べたいと思います。

1.当日のやりとり

まず、双方(原告、被告)の提出書類の実務的な確認が行われました。原告側は健康被害(甲A)、蒲生干潟に関する準備書面(甲C)、気候変動に関する書証(証拠となる文献、甲B)を提出し、被告側は、前回裁判で裁判所から求められた有害物質の排出状況(種類、量)についての書面を提出しました。

裁判長は、前回に引き続き積極的な争点明示と迅速に裁判を進めていく姿勢を示し、この裁判の中心的争点となる「人格権」や「平穏生活権」の侵害の具体的な証拠となる健康影響について、「40年の操業で760名の早期死亡」の計算方法についての説明を原告側に求めました。具体的には、文書記載の式5(注1)を「わかりやすく説明することができないか」と、裁判長から原告側訴訟代理人(弁護士)に問いかけがありました。それに対しては、「文書でしかるべき説明を補充したい」と、原告側訴訟代理人が返答しました(9月12日第5回裁判の1週間前9月5日までの文書提出を約束)。

また、専門委員を選定し、健康影響について原告側がパワーポイントなどを使って説明する日程として11月7日(水)15:00~(第6回口頭弁論)を確認しました。このような説明の機会を与えられることは珍しいことで、原告側が死亡数の推算方法などを説明し、専門委員(それまでに選定されているかどうかは未定)の質問や説明を受けながら、裁判官、被告、原告らが理解を深める形態で進めることが想定されます。

さらに、被告側訴訟代理人は、裁判所の職権で選定する上で「排出基準などについて詳しい専門家を望む」という希望を述べました。同時に、被告側訴訟代理人は、準備書面に対して反論を準備したい旨も表明しました(同じく9月12日第5回裁判の1週間前の9月5日までに文書提出)。

蒲生干潟や気候変動については、裁判長からの言及や質問はありませんでした。

2.今後の展望

本件で、「人格権」や「平穏生活権」の侵害の具体的な証拠となる健康影響が大きな争点になることは想定されていましたので、裁判長がそのことを認識し、原告側にプレゼンをする機会を与えてくれたことは、大きな一歩だと思われます。

その健康被害ですが、訴状や準備書面に載せた大気汚染物質曝露による死亡者数の推算は、主に、

1) 大気汚染物質の大気拡散モデルによる大気汚染物質拡散状況(濃度分布)の予測

2) 1)の結果と疫学知見を用いた死亡者数の推算

の二つに部分に分かれます。原告団としては、専門委員として、少なくとも大気拡散モデルの専門家が選任されることを期待しています。

(明日香壽川)

注1.甲A第11号証の2「仙台パワーステーション稼働による大気汚染および健康影響の評価」(ラウリ・ミルヴィエルタ/クリフォード・チュワ著、明日香壽川訳)p.13に記載されている、大気汚染物質濃度の上昇がもたらす死亡率の増加を推定する式

★原告側・被告側が提出した資料は、過去3回の裁判におけるものも含めて「資料」のページに掲載しています。

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