仙台PSの問題点

問題1.汚れた空気が、私たちの健康を奪う

仙台PSの大きな問題の一つは、大量の石炭を燃やすことによる大気汚染とそれにともなう健康被害です。石炭を燃やして出たガスは大気汚染物質を取りのぞく工程を経ますが、処理しきれなかった硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、ばい塵は大気中に放出されます。
これらの汚染物質は、それぞれ単独でも健康障害を引き起こします。
また、日光や他の汚染物質と反応し、オキシダントやPM2.5などの有害な複合汚染物質となります。

近年、特にPM2.5が注目され、その対策に迫られています。PM2.5は、その微細さのために呼吸を通して肺の奥深くにある肺胞まで達します。その中に含まれるさまざまな有害物質が、さらに血液を介して体内に侵入し、呼吸器だけでなくガンや循環器疾患、さらには糖尿病などの代謝疾患、自閉症や認知症などの神経・精神疾患へも影響することが指摘されています。

2017年6月、海外論文で米国のメディケア対象者約6000万人を12年追跡調査した結果が報告されました(注1)。
その中でPM2.5の濃度と総死亡にはあきらかな関連があり、10㎍/㎥の上昇で死亡リスクは1.07倍になることが示されました。しかもPM2.5には「これ以下なら安全だ」という値がないこと、またそのリスクは低所得者など社会的弱者により強くあらわれると結論しています。石炭火力発電は、このPM2.5を生成し濃度を上昇させる元凶のような存在です。

石炭火力発電は住民の健康を守るために、PM2.5を減らそうとしている世界の流れにも明らかに逆行する愚行です。

(注1)Di et el.,2017. Air pollution and Mortality in the Medicare Population, The New England Journal of Medicine, Vol.376, No.26, pp2513-2522,June 29,2017

問題2.気候変動のおもな原因であるCO2を大量に出す

気候変動の影響は年々あらわになり、深刻さを増しています。最新の研究では、ある熱波または豪雨が人為的な温室効果ガス排出とどの程度関連しているのかまで議論することが可能になり、例えば2017年夏のヨーロッパの熱波は、気候変動によって発生確率が約10倍に上昇したと報告されました。CO2の削減が喫緊の課題であることは言うまでもありません。

石炭火力発電は、化石燃料による発電方法の中でCO2排出量がもっとも多く、最新の技術を用いてもLNG火力発電の約2倍の量を排出します。仙台PSは、石炭火力発電の中でも古い技術である「亜臨界圧」という方式を使っているため、排出量はさらに多いことが予想されます。また、発電所は30年から40年は稼働することが見込まれ、これからCO2を急激に減らさなければいけない時代にもかかわらず、大量のCO2を長期間にわたって出し続けることになるのです。
気候変動は、大気汚染と同様に、生命や健康を損なうものです(人格権の侵害)。
日本政府が現在掲げている温室効果ガス削減目標は、パリ協定の目標を達成するには全く不十分なものですが、
石炭火力発電所を新設することはこのような低い目標でさえ達成を危うくさせ、気候変動対策に真っ向から逆行します。

問題3.ゆたかな生態系をかかえる蒲生干潟を壊す

仙台市内を流れる七北田川の河口部にあり、その北側に袋状に広がっています。
1970年代には、仙台港の建設計画にともなって消滅の危機をむかえましたが、それは撤回されました。現在は、干潟を含む48haが国指定海浜鳥獣保護区蒲生特別保護地区となっており、都市部近くにある貴重な自然環境として保護されています。
人工物の少ない自然の海岸や干潟には、渡り鳥が多く訪れ、浅い水域は小さな魚が育つ場所になっています。また、干潟には多くの底生動物(貝やカニなど)がすんでいますが、その営みは環境浄化につながり、さらに魚や鳥のエサになります。
こうした生物多様性ゆたかな干潟は、潮干狩り、魚釣り、レクリエーションなどを通して、私たちの生活にたくさんの恵みを与えているのです。蒲生干潟は小さいながら仙台湾の漁業資源にも大きく貢献しています。

仙台PSの煙突から排出されるばい煙には水銀などの有害物質が含まれています。ばい煙が干潟に降り注ぐことがあると、たとえわずかな量であっても、プランクトンなどによって有害物質が濃縮され、それを食物とする貝類などにさらに濃縮されることが考えられます。最終的には魚や鳥に取り込まれ、悪影響を及ぼすかもしれません。生きものがいなくなってからそれに気がついても遅いのです。私たちは、生物の宝庫とも言える蒲生干潟を健全な姿のままで後世に伝えていきたいと思います。

これだけではない。問われる企業としてのあり方

2012年以降、日本国内では50もの石炭火力発電所建設計画が起こり、仙台PSはそのうちの一つにすぎませんが、上記の3点に加えて次のような問題をはらんでいます。

まず、現状では電気が余っているにもかかわらず首都圏に売電する計画で、公共性がありません。
そして仙台PSの近接地域ではすでに日本のPM2.5の環境基準を超えることもあり、健康被害が発生することが考えられる中で、故意に稼働前の環境影響調査や健康調査をせず、責任をあいまいにしています。また、2016年4月に始まった電力自由化に便乗し、自社の短期的な利益を最優先にして被災地を汚し、さらに度重なる住民からの環境影響調査の要請などを無視するなど、企業としての姿勢も見過ごすことはできません。
裁判では、このように幾重にも重なった仙台PSの問題点について責任を問うています。

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