【報告】10月28日(水)判決言い渡しへ!

8月26日(水)15時から第14回目の法廷が開かれ、判決日は10月28日(水)11時からとなりました。長谷川が最終陳述を行い(次頁に全文を掲載)、結審となりました。新型コロナ感染拡大防止の観点から、原告側約10名と傍聴者が限定されていたのは大変残念でした。閉廷後弁護士会館401号室に移動し、原告学習会を開催、高橋弁護団長の解説のあと、判決後の進め方についても、意見交換を行いました。どのような判決になるのか、はたして差止めは認められうるのか、主なポイントを、できるだけわかりやすく整理してみました。
差止め判決のための5つのハードル
私達は、1)健康被害の恐れ、2)気候変動への悪影響、3)蒲生干潟の生物への悪影響の3点を柱として提訴しましたが、2018年4月に中島基至裁判長が担当になって以降は、1)健康被害の恐れに焦点をあてて審理を進めてきました。被告の仙台パワーステーション株式会社の主張は、つまるところ、「環境基準を順守し、公害防止協定も守っている、法令違反はない」に終始しています(被告準備書面(9)参照)。
判決を下す焦点は、①被告仙台パワーステーション株式会社の事業の進め方や住民への対応に瑕疵がなかったか(被告企業の悪質性の評価)、②大気拡散モデルから追加死亡者を推算する手法の信頼性の判断、③私達が年間9.7人、もっとも影響の深刻な多賀城市域で人口10万人あたり2.16人とした早期死亡者数の信用性の判断、④このように推算された早期死亡者数のリスクがある地域で、石炭火力の排煙の曝露を受け続けている原告の健康被害にかかわる平穏生活権の侵害を認定するかどうか、⑤発電事業の公益性などに鑑みて、平穏生活権の侵害をめぐる受忍限度をどのように評価するかにあります。平穏生活権の侵害の程度が受忍限度を上回るものと判断されれば、差止めが認められることになります。

①悪質性の評価
→②推算手法の信頼性の評価
→③早期死亡者数の信用性の判断
→④平穏生活権侵害の認定
→⑤受忍限度の評価
→差止め

差止めが認められるためには、このように大きく5つのハードルがあります。被告企業の社長尋問の際の、中島裁判長の厳しい問い詰め方から推測すると、①被告企業の悪質性は、ある程度認められる可能性が高いと見ることができるでしょう。
これまでの判例からすると、②以降は、結構高いハードルです。石炭火力問題に詳しい島村健神戸大学教授(環境法)によると、原告側が法廷で早期死亡者数の推算結果を明示したという点で、今回の私達の裁判は大変画期的です。ヨーロッパ諸国と異なって予防原則を重視しない日本の裁判で、②早期死亡の推算という手法の意義が認められれば、それだけで、大きな前進と見ることもできます。
仮に③早期死亡の増大に一定の証拠価値を認めたとして、④それが個々の原告の権利侵害とどう結び付くのかという大問題があります。最終陳述では、宮城県全体の交通事故死者数に匹敵するリスクであると述べましたが、多賀城市のような地域全体のレベルでの一定の健康リスクを認めたとしても、個々の原告に生ずる可能性を高いと見ることができるのか、という課題があります。
最後に待ち受けているのが、⑤受忍限度の判断です。私達は、電力の需給は逼迫しておらず、仙台パワーステーションが発電した電力は首都圏に販売され、原告の居住地域にはメリットもなく、公害防止対策を怠り、石炭火力以外の発電方法を全く検討していなかったことも問題だとしてきました。しかし被告側は、石炭火力は政府によって重要なベースロード電源として位置付けられているとしています。名古屋新幹線公害訴訟を始め、受忍限度をめぐる判断で差止めを退けた判例は少なくありません。
差止めを認めた主な公害・環境訴訟には、計8例の原発訴訟(もんじゅ訴訟を含む)のほか、大阪国際空港公害訴訟控訴審判決(1975年、最高裁判決(1981年)では訴えそのものを却下)、宮城県丸森町耕野地区での産廃処分場の操業停止の仮処分申請を認めた一審判決(1992年、確定)、尼崎道路公害訴訟一審判決(2000年)、自動車の排気ガスと工場排煙による複合大気汚染公害の名古屋南部公害訴訟一審判決(2000年)があります(尼崎・名古屋南部ともに控訴審段階で和解成立)。
10月28日には、歴史的な画期的判決が出されることを願っております。

★裁判に関する資料はこちらからご覧ください。
https://stopsendaips.jp/documents/

コメントは受け付けていません。