<報告>第12回・13回口頭弁論 追い詰められた被告仙台PS砥山社長

3月31日の結審を控えて、私達の裁判も大詰めを迎えています(結審は5月中旬以降に延期となりました)。

2月5日(水)10時から第12回口頭弁論が開かれ、101号法廷で原告を代表して須田富士子さん、村田ちひろさん、 水戸部秀利さんの3名の方が、臭いなどの生活への影響、 健康への影響、大気汚染の実状などについて、いずれも落ち着いて堂々と証言されました。幸い被告弁護団からは、揚げ足をとったり、嫌がらせのような質問はありませんでした。3名の方による本ニュースへの寄稿および尋問調書速記録をご覧ください。

続いて2月17日(月)10時からは、第13回口頭弁論が開かれ、101号法廷で、被告仙台パワーステーション株式会社 代表取締役社長砥山浩司氏への尋問が行われました(砥山浩司尋問調書速記録参照)。傍聴席は満員でした。公害・環境裁判に関する法学的研究の第一人者淡路剛久先生(立教大学名誉教授)によれば、刑事訴訟では例がある が、日本の公害・環境問題に関する民事訴訟で、被告企業の代表取締役社長が法廷で尋問を受けるというのは大変画期的で、おそらくはじめてだろうということでした。

とくに唖然とさせられたのは、仙台PSが地元住民にとってどんなメリットがあるかを問われた際「地元住民の方にメリッ トがあるかどうかを考えたことがないです」と正直に答えられた点です(砥山浩司尋問調書速記録p.24)。傍聴席からは 失笑が漏れました。河北新報・仙台放送の翌日の報道もこの点に焦点をあてています。「石炭を荷揚げできる港、送電線の容量、工業用水、建設用地、建設資金」にしか、砥山氏の関心はなかったようです。大気汚染をもたらす石炭火力発電所が地域住民にとって、一種の「迷惑施設」であることは自明です。地元住民といかに共存していけるのかは、石炭火力発電所を建設・運営する側にとってもっとも基本的な課題でしょう。尋問にあたって、砥山氏、仙台パワーステーション株式会社、被告弁護団は周到な準備を行ったはずです。彼らにとって想定外の質問だったのでしょうか。 地元住民にとってどういうメリットがあるかを考えたことがないという発言自体、砥山氏の経営者としての自覚・倫理観・ 責任感の乏しさを端的に示しています。また被告弁護団の勉強不足・準備不足・努力不足もあわせて露呈しました。

被告側は、裁判に入ってから突如「仙台PSの稼働前後において周辺の大気環境に有意な差がみられるような変化は生じないことを確認するなど、自主環境影響評価を行っている」と強弁しはじめました(被告準備書面(1)p.5)。しかし被告側主尋問において、「環境影響評価法に記載されていると同じ手法を用いて、大気環境に関する環境インパ クトの評価は実施いたしました」と述べるにとどめ、被告側は「自主環境影響評価を行っている」という主張から大幅に後退しました。

パリ協定成立以後の石炭火力に対する国際的な逆風を認識していることを認める、「木質バイオマスの混焼の可能性は検討しているが、結論には達していない」などの興味深い発言もありました。

関西電力の石炭火力・舞鶴(おそらく1号機か。90万kW、 2004年操業開始)の環境影響評価では、40億円がかかったとも述べていました。仙台PSの場合には、アセスを免れたことによって、数億円分とアセスに要する約2年間を節約できたことになります。

中島裁判長からは、
1)公害防止協定第20条(「環境情報 の公表や事業所の公開等,地域住民に対する環境コミュニケーションを積極的に推進する」)に関して、仙台PSとして、「この協定書を締結した平成28年3月2日から現在に至るまで、この20条の規定を守っておられるのか、あるいは守っていないのか、どちらのご認識なんでしょうか」「現状のままで、20条の規定を十分守っているという理解なのか、あるいはまだ足りないところがあるというご理解なのか、どちら なんでしょうか」という重ねての端的な問い詰めがあり、追い込まれた砥山社長は「皆さん不十分だと言われるということは認識してございますので、これから改善していくことが必要なんだと思っています。」と低姿勢となりました(砥山浩 司尋問調書速記録p.38-9)。
2)PM2.5による健康影響の不安についても尋ねられ、「PM2.5については規制がない。規制が決まれば適切に対応していく」という居直った回答でした。 (長谷川 公一)

★裁判に関する資料はこちらからご覧ください。
https://stopsendaips.jp/documents/

コメントは受け付けていません。