<報告>第5回口頭弁論 専門委員選任をめぐって

約1時間の進行期日協議

4月に交代した中島基至(もとゆき)裁判長の異例の訴訟指揮による裁判が続いています。9月12日(水)13時30分から、第5回法廷が開廷。原告側が相対危険を用いた早期死亡の推算過程について説明した第5準備書面を、被告側が準備書面(3)(仙台PSによる大気汚染・健康への影響を主張した原告側第2準備書面に反論したもの)を陳述したあと(実際は双方書面の提出のみです)、「本日進行期日協議をあわせてやりたい、専門委員選任について意見交換したい」として約1時間にわたって、主に裁判長が原告・被告双方に質問する形で専門委員の選任をめぐるやりとりが行われました。今後の裁判の進め方を話し合う「進行期日協議」は、通常は裁判官、原告側代理人、被告側代理人の間で、いわば「舞台裏」で非公開で行われます。このように公開の法廷の場で行うのはきわめて異例です。

専門委員制度は、司法制度改革の一環として2004年度から導入された仕組みです(民事訴訟法第92条の2〜7)。建築問題に関する裁判や医療過誤訴訟では、専門委員として専門家を招聘することはありますが、環境問題をめぐる訴訟では、今回実現すれば日本初の事例となります。

裁判官からは、疫学や公衆衛生学の専門家で、PM2.5に関する環境基準の設定にかかわった内山巌雄京大名誉教授を選任したいという意向が事前に示されていました。

裁判長に意見を求められましたので、原告側は大気拡散モデルと疫学的な知見は分野が異なるため複数の専門家が必要であること、1人だけなら優先すべきは大気拡散モデルの専門家であると述べました(詳しくは、「専門委員の選任及び関与に関する意見書」を参照)。中島裁判長は、複数にするかどうかは必要性の判断によると返答。

裁判長は続いて、PM2.5の値が高くなるとどの程度死亡が増えるのか、濃度上昇と死亡数増大の論理について質問、原告団事務局長である明日香壽川先生(東北大学東北アジア研究センター教授)が説明しました。裁判長は被告側データとの相違点について質問、明日香先生は、被告側はばいじん量は公表しているが、PM2.5の値を公表していないと返答しました。裁判長は大気汚染の拡散に関するカルパフモデル(※)の中身はどこで説明されているのかと質問、佐藤弁護士が第4準備書面で説明していると回答。明日香先生も予測値と観測値が一番近いモデルがカルパフモデルであると補足しました。

11月7日パワポによるプレゼン

11月7日の次回法廷において、大気拡散モデルとシミュレーションについてのプレゼンをパワーポイントを用いて明日香先生が60分程度で行うことになりました。大気拡散モデルの専門委員の候補者を原告側が紹介し、この日のプレゼンをふまえて、選任するかどうかを裁判所が判断することになりました。

内山氏は関西在住で、仙台に来ることができないため、12月5日(水)13時30分からテレビ会議を使って、原告が内山氏に対してプレゼン(11月7日の簡略版)を行うことになりました。専門委員への質問事項は原告・被告双方から11月5日(月)までに提出します。

裁判長は、被告側に対して「原告のモデルへの反論の準備はできているのか。原告が主張する方法以外の健康影響評価の方法があるのであれば、それについてもプレゼンしてほしい」と求めました。被告側は今後検討するとして回答を留保しました。

第5回法廷も、原告や市民の方々、20数名が傍聴、その後に弁護士会館401号室で開催した原告団報告会でも、活発な質疑や意見交換が行われました。

11月7日の第6回法廷では、PM2.5の値が高くなるとどの程度死亡が増えるのか、それをどのようにして科学的に導き出したのか、明日香先生の明解な説明をお聞きください。裁判長や被告側はそれにどう応答するのか。裁判の大きな山場となります。ご注目ください。

 

※カルパフモデル及びシミュレーションについては、第4回口頭弁論で提出した証拠甲A11-2下記のウェブサイトをご参照ください。英文の後に日本語訳があります。

★原告・被告双方の準備書面、「専門委員の選任及び関与に関する意見書」など、裁判所への提出資料は「資料」のページでご覧になれます。

 

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